やち犬


事発端は―――――‥




着信中【ユマ】



この、真夜中にも関わらず耳元のすぐそばで鳴り続けた着信音から、すべてが始まった―――――‥




『あ、寝とった?』

「‥なに」


携帯画面の斜め上に表示されてある時刻“01:30”を確認しながら


『っちょ!頼みたいことがあるんやけど!』

「はぃ?‥切る」


そのまま黙って切ればよかったのに


『お願い!!ちょっとだけ付き合って!!』

「ムリ、眠い」

『タバコ買って今から迎え行くから!!』

「‥わかった、」


その時、ちょうどヤニ切れだったあたしはユマの言う“ちょっとだけ”って言葉と“タバコ”って文字を聞いて


『んじゃ、10分後に!下で!』

「‥あい」


ほんと軽い感じで、むしろタバコを下まで受け取りに行くだけって感覚で


‥下に降りたのがいけなかった。

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