好きと言えない。―悪魔と恋―【完】
昨日、忘れた定期を取りに行こうとすると、課長に腕を掴まれた。



「泣き止んでから動け」



涙目な事、バレてしまったんだ。

私は頷き、ため息を吐く。

決めた事なのに。

決意が揺らぐ。

気付かなかった事にしよう。

知らなかった事にしよう。

そう…思ってしまう。



「好き…なのにな…」



彼女である事。

隣に居れる事が嬉しかった。

なのに。

手離す事が、こんなにも辛いなんて。

課長は入り口に立ち、誰も入れないようにした。



「悩むのも若いからだな。
悩んで悩んで…それでも答えがなければ、俺んとこへ来い」



「……」



課長は、私の涙の理由に気付いてるのだろうか。
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