zinma Ⅲ










「だから!
あたしはただのシーフなの!」


「ふーん。」


「あんたが貴族に見えたから、お金持ってるかと思ってつけて来たのよ!」


「ふーん。」


「ふーんって!あんた!
ちゃんと聞いてんの?!」


「いいえ。」


「んなっ?!
もう!なんなの!
そっちのおじさんもなんとか言いなさいよ!」





そう言われて、ダグラスは横目でうるさい方を見た。


さっきの少女はたき火の近くの木にロープで縛り付けられていた。

なぜか今はダグラスの方を向いてぎゃーぎゃーとうるさくわめいている。



その木の上の方の枝に、さっきのように座っているのはレイシアだ。


しかしさっきよりも脱力したように、半分枝に寝そべるような形でナイフをいじっていた。





そこでダグラスはやかましい声を無視して、隣に並んでたき火に当たっているシギに話しかける。


「うるさい子だな。
耳が壊れる。」

「ほんとにそうですね。」

「しかしあの年でシーフって、どうなってんだ。」

「あ、そうそう。シーフってなんです?」

「こそ泥のことだよ。」

「ああ〜、なるほど。」



「ちょっと!何をこそこそしゃべってんのよ!」



かっ!



「って、またナイフ………。」


「さっきから黙ることを学びませんね、あなた。

勝手に話せる立場じゃないと何度も言ったでしょう。」


「うぅ…………。」




さっきから何度も繰り返されるレイシアと少女の同じやりとりに、ダグラスとシギが長いため息を吐く。


「ため息を吐きたいのはこっちですよ。」


そう言うとレイシアが軽く木から飛び降りて、2人のところへ歩いてくると、同じように並んでたき火を囲む。




レイシアが座った途端、なぜか少女のわめき声が聞こえなくなる。


「ん?急に静かになったな。」


ダグラスがそうつぶやいて少女のほうを見ると、少女はさっきと変わらずわめいている様子だった。

しかし声だけが聞こえない。



「……ああ、魔術を使ったのか。」


レイシアが魔術を使ったことに納得して、ダグラスはまた視線をたき火のほうへ向ける。




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