zinma Ⅲ
「これはこれは。なかなか絵に描いたような展開ですね。」
そう言ってレイシアは潜んでいた木の影から身体を離す。
そして完璧に気配を消したままその場を離れる。
森を抜けたところで、ふむ、と一度うなずいてから、
『リィラ』
と言う。
次の瞬間にはレイシアは遥か上空まで浮き上がっていた。
レイシアはその上空で、まるでベッドに横になるようにして、無造作に寝転がる。
一度息を吐き、目を閉じる。
「愛、ですか。」
小さくそうつぶやいて、しかし笑う。
「本当に人間はおもしろい生き物ですね。
愛し愛され、泣き、笑う。」
それから薄く目を開く。
「私も、人間だったはずなのですが…」
と言って、空を見上げる。
「私は…いつから、人間をやめたんでしょうね。」
それから、目の前で輝く月に手をのばす。
「きれい、ですよね?」
と言ってから自嘲気味に笑い、レイシアは目を閉じた。