逆らわない
「35分ね…」

アイスコーヒーのグラスの中で、氷の音をさせながら畠山君が言う。

私は対面の位置に座る。

ピッタリと足を閉じ、膝の上に手を置く。

視線は下を向いたままだ。

「僕は15分以内って言ったよね?」

「…ごめんなさい…」

俯いたまま、蚊の鳴くような声で言う。

反論はしない。

15分では辿り着けない距離である事も、こんな格好で外を歩かされた事も、一切文句は言わない。

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