白い翼と…甘い香り

「こっちに
残ったらダメなの?」

「何のために?」



「向こうには
お友達なんて居ないわ。

私は知らない土地で
1人で過ごすの?

習い事だって
頑張って資格を取れそうに
頑張ってるんだもん
途中で辞めたくない。

母のことだって気になる。
行きたくないわ」



それだけ言うので
私には精一杯だった。

そう伝えながら
答えは分かっていたのに
足が震えていた。

何を言っても
ムダだという事は

とっくの昔から
知っていたのに…


「はい、分かりました」と
普段はそれしか言わない
私を

主人は
不思議そうな目で見ていた。





「そんな事は問題外だ。
日本人の多い街だから
友達は作ればいいだろう。

習い事なんか
どこででも出来る。

お母さんへも
充分な事はしておく」



そう言い切ると
カバンの中から
書類を出し始めた。


私との会話は、終わり…



もう口を出すなと
そんな合図のようだった。

怒りと、悲しみが

込み上げる。


< 137 / 312 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop