白い翼と…甘い香り

■甘い香り■


その日は、朝から忙しかった。

こちらへ来て何ヶ月か過ぎ
主人の仕事は順調に進んでいて

新しい工場の準備は
すべて出来上がり

来週から工事に着工すると
いう事になっていた。


だから週末の今夜
新工場の社員や
工事の請負会社

日本から応援に駆けつけた
本社の社員

色んな人が集まっての
竣工記念パーティーがある。

もちろん
私も行かなきゃいけなくて

別にウキウキする気持ちも
楽しみだという感情も
無かったけれど

それなりの準備は
しなきゃいけなくて大変だった

こちらへ来て
まず最初に驚いたのが

そういうパーティーの
派手な事だった。

仕事の関係でも
必ず夫婦同伴だと言われて

パーティードレスを探し
それに合わせた
バッグに、靴に、アクセサリー

エステで磨いてもらい
美容院へ行き髪を整える。

自分で準備しても良かったけど
そう器用でなかった私は

髪の毛をセットするなんて
上手く出来なくて
プロに任せた方が安心できた。


あぁ…、面倒くさい…

仕方なく私は
着たこともないような
ドレスを探した。

仲良くなった隣の奥さんは
世話好きで面倒見が良くて

色んなお店を
一緒に回ってくれて

「リカちゃんは
黒が似合うわ!」

なんて言いながら
2人でショッピングを楽しんだ。

ドレスを選ぶことが
楽しいのではなくて

同年代の女友達と
たわいもない話をしたり
少し奮発したランチを食べたり

キレイなアクセサリーを見たりするのが
普通の楽しい出来事だった。


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