幕末に来た少女〜
「何故と問われると
少々困りますが
帰りたくないのは
確かです……
色んな意味で
あの時代は疲れます。」

“なじめない”というのは
間違っていないと思う。

「向こうには、
親だって友人だって
居るだろう?」

土方の言うことは
尤もだが燐には決して
正しいことではない。

「確かに、母も友人も
居ますが帰りたくないんです」

いかにも切羽詰まった
声をだす燐。

「分かりました、
詳しい理由は
何時か話して下さいね」

屯所に
居られることになった。

「ありがとうございます」

「行く宛てがないんじゃ
しょうがないな」

未来でいう
ツンデレだろうか?

「私も賛成だ
未来の話しにも
興味がある」

「聞かせてくれるかい?」

「はい」

そんな和やかな中で
沖田が口を開いた。

「そぉいえば、
燐さん
芹沢さんが
何かするって
言ってませんでしたか?」

「あ!! 言いましたね」

すっかり忘れてたらしい。

「芹沢さんが
どぉかしたのか?」

「二日後、土方さんは
沖田さん・山南さん・井上さんを
伴って芹沢さんを暗殺するんです」

言ってる燐の声には
少し、悲しみが混じっている。

「そんなことが……」

沈黙が続く。

「私、新撰組が
好きですけど、
芹沢さんは苦手です」

燐がそぉ言うと
沖田が便乗
するように言った。

「私もあの人苦手です
威圧的な感じで
駄目なんですよね」

〈教科書でしか
知らないけど
私は苦手だった〉

「試衛館時代の
皆さんは、芹沢さん
どぉ思ってますか?」

燐が山南や藤堂の方を
向いて聞いた。

「俺はあんまり
好きじゃねぇな」

最初に答えたのは原田。

「私も彼には
目に余る所があると
思っていたんですよ」

次は山南だ。

全員に聞く訳にも
行かず最後に
平助に聞いた。

「俺はあの人嫌いだ」

ムスッとして平助が答えた。

「二日後に何も
起きなければ、
私を斬って頂いて結構です」

じーいっと土方の
目を真っ直ぐ見て言った。

「分かった、
お前の言うことを
信じてやる」

答えたのは土方だ。

「ありがとうございます」

「取りあえず
良かったですね」

ポンと燐の肩に手を
置いたのは意外なことに
山南だった。

「はい、
これから宜しく
お願いします」

さっき同様ペコリと
お辞儀をした。

「宜しくね」

皆を代表して
新八が言った。

「燐ちゃんって
呼んでいい?」

いきなり平助が
聞いて来た。

「呼び捨てでいいですよ
向こうでも
仲良かった人達は
呼び捨てでしたから」

〈ちゃん付けとか
何か慣れないから
恥ずかしいもんね〉

「燐って料理出来る?」

「それしか出来ません」

〈まぁ、こっちだと
色々勝手が
違うだろうけど……〉

「その前に、敬語で
話すの止めない?」

〈あ、いやそれは……〉

「百五十年先の未来から
来た燐さんにしたら
皆年上でしょうけど、
今は此処に
居るんですから、
近藤さんと土方さんと
山南さん以外は
私も含めて皆年下ですよ」

〈そぉだった〉

「ぁはは、忘れてたました」

未だに敬語の燐。

「燐って幾つ?」

「呉服屋のお華さんと
同い年だそうですよ」

〈沖田さんに
先に言われちゃったけど
まぁいっか〉

「燐の方が年上だな」

と言ったのは意外にも
近藤だった。

「あれ?武田さんも
年下でしたっけ?」

〈武田さんの年は
よく覚えてないんだよね〉

「そぉだ」

武田本人が答えた

「ということで
三人以外には
敬語なしっていうことで」

沖田はマイペースである。

「……分かった」

腑に落ちない感じだが
沖田は一度言い出したら
聞かないだろうと思い、
承諾することにしたようだ。
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