LITTLE
「うん」
 絶えずお母さんの口から出るお父さんへの悪口。
 私は、それに無感情に頷く。
 同情する事もなく。
「そういえば勉強の方は進んでいるの?」
「うん」
「そう。しっかりやらないとダメよ。あんな市立の小学校で一番の成績も取れない様じゃ、あなたが行きたいと思う私立中学には入学できないんだから」
 別に、私が行きたいと望んだわけではない。
 この人が私を行かせたいと望んでいるのだ。
 しかし、そんな事を言えば、この人は私ではなく別の人間に対して怒りを抱く。
 私に『こんな考えを押し付けたのは誰か』と。
「そういえば前の保護者会で、あなたの担任の藤原って先生。何て言ってたと思う?」
「何?」
「子供達には大らかに楽しく毎日を過ごして欲しいって。おかしいわ! これだからキャリアの低い先生は馬鹿なのよ!」
「……うん」
 この人が、私の親しい人達への暴言を吐いても、私は頷く事しかない。
 そうしないと、この人は私以外の当人に対して、余計に怒りを増幅させるから。
 たとえそれが優子の事であっても。

  =^_^=

 九月二十三日。
 晴れ。
 二学期最大行事である運動会が終わって、一段落した翌週の日曜日。
 私は綾瀬と二人、朝方に隣街を訪れていた。
 電車で二駅の所にある新都市。
 街に据え付けられた街灯や、大通りに並ぶお店やオブジェは西洋風の作りをしていて、まだ新しい。
 駅から出てすぐのロータリーにあるバス停留所。
 ここから出るバスで三つの停留所を通り過ぎた所。
 そこが私達の目的地。
 教会だ。
 私と綾瀬は、教会のミサに来たのだ。
 互いに、両親が日曜日の教会へ行かなくなっても、私と綾瀬は必ず、一緒にミサには参加している。
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