LITTLE
 日曜日という事もあり、バスは人の乗降も少なく、すんなりと乗れる。
 私達はいつも通り、一番後ろの席に腰を降ろした。
「マミ、今日は何を作ってきたの?」
 綾瀬はいつも、私が作って来るお菓子を楽しみにしている。
 期待に満ちている表情も仕草も、普段では学校では見れない彼だ。
 なんだか可愛い。
「今日はワッフル。食べるのは、教会に着いて、お祈りが終わってからね」
 優子のお母さんから作り方を教わった、ホイップクリームと苺を乗せたワッフル。
 綾瀬に食べてもらうのが楽しみだ。
「ちょっとだけ、ここで俺が味見してやるから。お願い!」
 綾瀬は笑顔でぺこぺことおねだりをする。
「だめ。教会でミサを済ませてから、シスターさんや皆と食べるんだから。綾瀬も、その時にね」
 チェーっと言って、綾瀬はそっぽを向いた。
 頭が良くて、友達思いで、かっこいい。
 綾瀬は、そんな印象を学校では皆に与えている。
 でも日曜日に私の隣にいる綾瀬は、どこか子供っぽくて可愛い。
 やはり人というのは、一緒にいる相手によって態度が変わるものだ。
 勿論、私も……。

 教会には、既に私達以外のキリシタンの人達も来ていた。
 所々の長椅子に座っているのは、殆どが少数人の年寄りや小さな子供だ。
 前の方の席には二人、シスターさんが座っている。
 私達は後ろから二番目の長椅子に座った。
 やはり見渡したところ、顔ぶれはいつもと同じ。
 日曜日のミサに来るか来ないかなんて、私や綾瀬の両親と同じで、当人の自由だから仕方がないのだけれど。

 聖壇に神父さんが立ち、説教が始まった。
 黒い大きな縁の眼鏡、男の人にしては長く伸ばした長髪。
 他の教会では知らないが、ここの神父さんは服装以外では、あまり聖職者と呼べる様な風貌はしていない様に思える。
 それでも説教はしっかりとしているし、クリスチャンの人達は皆が、神父さんを聖職者として信頼している。

 長い説教が終わると、最後にお祈りをする事が決まりになっている。
 両手を組んで目を閉じ、私達はキリストの銀に光る十字が飾られた聖壇へ祈りを奉げた。



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