聖戦物語 奇跡が紡ぐ序曲~overture~

第四楽章

 ゆっくりと、気を巡らせていく―――…。


 祈るような思いで、杖を振ったサリアは、杖の先端が煌めいたのを見て顔を輝かせたが、その光は数回瞬く程度の短い時間で潰えて、深いため息をついて腕を下ろした。


「―――――失敗、か」


 傍で見守っていたアルジスが、結果を明確に示すように言葉として宙へ放ったため、サリアは更に落ち込むしかない。


「………大体の魔法使いの系統は試したはずなんだが…」


 深く考え込むように顎に手を当てて俯いたアルジスに、サリアは力なく笑いかけた。


 大魔導師(ウィザード)や賢者(マギ)、賢術師(セイジ)などの一般的な上級魔法の使い手としての素質なしと考えて、数週間前から特殊な魔法使いとしての知識を詰め込みながらどのタイプと相性がいいのかを試し続けた。


 精霊使い(エレメンタラー)としての素質を試すための精霊を呼び出す儀式には失敗し、絵描師(ピクトマンサー)としての素質は絵を具現化できないと判明して違うことが分かった。方陣士(ファランクス)は魔方陣を描いたところで何一つ起こらなかった。


 自然干渉術師(カバリスト)はほんの少し魔法が杖の先を弾けたが数回やると何もできなくなるので近くはあるが違うようだと理解して、今は言霊術師(スペルマスター)としての素養を試してみて同様となった。


 後試していないのは、なんだったかと記憶を掘り起こすアルジスの傍ら、このままではセカンドに上がるための試験に落ちてしまうとサリアは肩を落とす。せっかく希望が見えてきたのに―――。


 
< 41 / 132 >

この作品をシェア

pagetop