彼×私×彼女の事情
「キャー」
私はカバンをおでこまで挙げ叫んだ。
……。
何もおこらなかった。
カバンを下ろして顔をあげてみると350mlの缶を2つ持ったお義母さんがたっていた。
お義母さんは驚いて黙って固まっている。
「スミマセン」
(ガツン)
勘違いしたことを謝りたくて急にたったためお義母さんの持っていた缶に突撃してしまった。
するとお義母さんはよろけてしまいソファーとテーブルの間にしりもちをついてしまった。
マズイ……。
やってしまった……。
「スミマセン。スミマセン」
他の言葉が出てこない。
だめだぁ〜。出入り禁止だ。
「痛タタタ……なんなの」
びっくりするぐらいの大きな声で怒鳴られた。
細い体からあまりにも大きい声が出たことに正直驚いた。
「いや、ちょっと」
「ちょっとなに」
お義母さんが包丁で斬り付けにきたと勘違いしたとは言えず。
「缶が光の屈折か動物に見えてその動物が飛びだしてきたように見えて」
日本語としておかしいのはわかっていたがパニックで言葉を繋げるのがやっと。とっさについた苦し紛れの言い訳だ。
「それより、お義母さん痛いところどこですか?」
「本当に理解ができないわぁ。しりもちの衝撃が腰に響いたみたい。痛タタタ」
「冷やしましょう。湿布とかあります?氷とかで代用しましょうか」
「ちょっと響いただけだからそんな大騒ぎしなくて大丈夫よ。もぅましになってきたわぁ」
そう言いながらソファーに座った。私はソファーに座るときに手を差し出すことしか出来なかった。何をやってるんだろ。私は自分が情けない。
「本当に申し訳ありません。本当に申し訳ありませんでした」
私は頭を下げ続けた。
「もぅ、いいわ。解ったから。わざとじゃないんだし」
「ありがとうございます。ありがとうございます」