彼×私×彼女の事情

安心したため、涙が流れた。


安心しただけじゃない。自分の馬鹿馬鹿しい勘違いでお義母さんを傷つけてしまったにもかかわらずお義母は素直に許してくれた。やさしさに感動していた。俊くんがお義母さんのことが好きな理由が少しわかった気がする。


私は泣きながらお義母さんがしりもちをついた時に落としてしまった缶をテーブルに拾って置いた。


よく見るとカシスオレンジのカクテルだった。私のためにお酒を買ってきてくれたんだ。


「白鳥が出来たことをお祝いしようと思って買ってきたの。俊があなたが好きなお酒はカシスオレンジだって言ってたから。ビールは苦手なんでしょ?」


「ハイ。苦い味が苦手です」


お義母さんの思いが胸に突き刺さって痛い。私は勝手に怖いお義母さんだと思っていた。本当は心の優しい人なのかもしれない。きっと根は優しくていい人。じゃなかったら俊くんをあんなふうに育てることが出来ない。もっと早く気がつくべきだった。


「今日はお祝いはいいわ。また今度にしましょう」


「ハイ」


お母さんは腰をさすりながら立ち上がって紙袋に白鳥を入れてくれた。


「病院に行かなくて大乗ですか?」


お義母さんは笑いながら


「もう、ほとんど平気だからいい。明日、また痛むようなことがあったら行くわ。それより、その顔どうにかしたら。泣いたせいで変よ。化粧も崩れているし」


「ハイ」


本当にブサイクな顔をしていた。私は洗面台を借り、化粧直しをした。リビングに戻ると私のカバンと白鳥が入った紙袋がテーブルに置かれていた。


「今日は何から何までありがとうございました。体に何あったらすぐに連絡ください」


私は深々と頭を下げた。



「解かったから。もう少しすると主人が帰ってくるから遅らせるからもうちょっと待ってて」


「いえ、大丈夫です。一人で来たんですから一人で帰ります。本当にスミマセンでした」


私は俊の家から帰ることになった。

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