兄さんには腹括ってもらわにゃならんけぇの

俺が嫌悪するもの。
人間という物体。
感情なんて面倒なものを
持っているから。
俺もそう分類される1人で、
それ以上でも、それ以下でもない。

「おい、聞いてるのかよ」

前の席で俺の机に頬杖をつきながら
俺を睨む物体のように。

「もう1回頼む」

「あいつと別れた」

事もなげにそう言った男は、
いつもの無表情に、
少し寂しそうな笑顔を見せる。
俺には理解できない。
というより矛盾している。
俺の記憶が正しければ、
一生大事にするって言ったはずだ。

「んでもって、
彼女できたから紹介する」

携帯電話を取りだして、
ファイルから彼女の画像を
探しているようだ。

無理をしている。
いつもそうだ。
告白されて付き合って…
こいつが好きになった瞬間、
駄目になる。
全部。

でも、もしかしたらそれでいいのかもしれない。
俺達に関わること自体がリスクを背負うことになるから。
本当の意味で失うことはなくなるから。



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