+夜に奏でる恋の歌+
「大丈夫…でもこの三日間、何も食べてない…んだ」
声からして男らしい。

「え!?大丈夫ですか?!私おにぎり持ってますよ!」

鞄からおにぎりを取りだし、その男の人に差し出した。

すると、

「そんなものはいらないよ…僕が欲しいのはさぁ」

いきなり腕をつかまれた。
「あ、あの!?」

男の人の手を振りほどこうとした時、ふいにフードから顔が見えた。

「っ!?」

金色の髪に燃えるような赤い瞳。そして、ニッと笑った口からは二本の鋭い牙。
予想通り、私と同い年くらいだった。

「くくっ…まさかこんなに簡単に血を飲めるなんてね…お嬢さん」

「きゃっ!!」

そう男の子は言うと私を地面に押し倒した。

「1000年に1度…くくっ…ついにこの時がやってきたー」

「ちょっとっ…!?」

首筋を舌がなぞる。
その感触にゾクッとした。
視線が
ぶつかり合う。
赤い瞳を見つめた瞬間、
体中の力が抜けた。
抵抗していた腕がだらんと下がってしまった。


「あんたっ…吸血鬼!?」

「そうだよ…だからさぁー…さっさと血を飲ませろ」
声がさっきの小さい子供みたいな可愛い声から一変した。
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