黒い羽根




 どんな綺麗な言葉を聞いても。
 どんなに邪気の無い笑顔を見ても。



 その裏に潜む黒くて醜いものを探らずにいられない僕は、羽根がなくなったとしても不快感と疑り深い醜い心を抱えたまま。

 その憂鬱さにうんざりしながら生きていくに違いない。

 だったら。

 それは今となんら変わることはないじゃないか?

「智彦~! お会計よろしく~」

 どうやら交渉が終わったらしいマリアさんの声に振り向き、ポケットから財布を取り出す。

 野菜が並べられた陳列台の向こう側に居るいつも顔を合わせる店のおばちゃんが、いつもの人の良さげな笑顔を僕へむける。

「いや~元気なお姉ちゃんだね~。智彦君の彼女かい?」

 そう言っておばちゃんがレジに打ち込んだ金額を払いながら。

「いえ……遠縁の……親戚です」

 僕は愛想笑いを返す。

 客商売ならではの、くったくのない笑顔と何気ない挨拶代わりのちょっとした冷やかし文句。

 ――でも


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