黒い羽根
「えっと……せっかく来てくれたんだし、お茶でも飲んでいきませんか?」
どう対応していいかわからず、とりあえず引き止めるために出てきた言葉は実にありきたりで情けないもの。
助けを求めようかと、ちらりと横目でマリアさんの顔を伺うものの、にやにやとした笑みを浮かべているばかりで、どうやらあてには出来ない。
この状況を楽しんでいるのが実によく分かる笑み。
『この、悪魔』
心の中で悪態をつくものの、事実だけにむなしい悪態だ。
「ううん。遠慮しとく……元気そうだし、配達の途中だし」
案の定、僕の間抜けな台詞に小百合さんを引き止める力はなく。
「見てくれる人もいるみたいだし」
マリアさんに笑顔をむけてそう言って。
「明日は来れるわね。じゃ……」