『若恋』榊の恋【完】




「…いけません。まだ」

これ以上触れていたら見つめていたらひかるちゃんに飲み込まれる。

無理をさせたいわけじゃない。
自然にその時がきたら―――それでいいと思っているから。

それは今じゃない。



「大事にしたいんです」

「さか、きさん」

「ひかるちゃんを今はまだ…」



触れたら壊れてしまう。

今はまだその時じゃない。

ひかるちゃんがまだ小刻みに震えているうちは。



大事で怖い。

一度抱いたら止まらなくなる。それがわかるだけに怖がらせたくない。



「大事なんです。ひかるちゃんが」



見つめてくる潤んだ瞳を真っ直ぐに見返す。



「りおさんが待ってるので…行きましょう」



すっと視線を外す。

「榊さん、わたし」

「いいんです」


大事だから触れられない。
大事だからひかるちゃんの気持ちがちゃんとついてくるまで待ちたい。



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