『若恋』榊の恋【完】




『―――榊さん』



柔らかくてよく聞きなれたはずの声が聞こえて振り返る。

そしてそこにはひかるの姿はない。





「わたし、ここで彼の手配してくれた車を待ってたの」

「?」

話が全く見えない。
彼女がそばにいるのが煩わしい。

ひかるを探さなければならないのに、彼女に構ってはいられない。



「悪いんですが、恋人を捜さなければならないので」

押し退けるようにして前に一歩足を踏み出した。






「待って!」


背に彼女が叫んだ。







「彼女、わたしと間違えられたんだわ」









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