『若恋』榊の恋【完】


半年前に世話になった元太や組長、そして自分にそっくりな榊原が浮かんだ。


「彼は今どこにいますか?」


封筒を受け取り封を切り開くと一枚の写真が出てきた。

組長からだ。



元太と彼女の結納写真だった。


『榊とひかるさんがいなかったら、うちのふたりは結ばれなかったろう。ありがとう。

―――幸せになれ』



そう書いてあった。



「すいません。若、5分時間ください」


榊原がここに来ている。

一言礼を言いたかった。


「まだ、離れの方の庭を歩いてるかも」

「行ってきます」



草履を履き縁の下を歩き離れの庭を探す。



榊原、どこにいる?


姿はすぐに見つけることができた。

桜の蕾が膨らんでいる樹を見上げてるその後ろ姿は自分そのままの姿だった。


「榊原」


ゆっくりと振り返る榊原は以前に見た時よりもずっと穏やかに見えた。



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