吸血鬼は淫らな舞台を見る episode ι (エピソード・イオタ)
舐めようと舌を出したとき、風を切り裂くモーター音が外から聞こえた。
「残念」ガクッと頭をたれ「意外に早かったね」とイオタは苦笑いを見せる。
「なんか緊張するな」シータはフゥ~と重そうに空気を吐き出す。そして手を振り「また会えるといいね」と、ニコッと笑って肖像画のある部屋から出ていく。
イオタにとって別れの挨拶をされたのは初めての経験で、シータの笑った顔が脳裏から離れない。
意識してしまったのは自分が孤独という感情に負けそうになっているからじゃないかと自分を訝り、頭の中でシータの笑顔を押し潰す。