吸血鬼は淫らな舞台を見る   episode ι (エピソード・イオタ)


ということは過去にいるわけではないらしい。問題はいつの時代の未来にいるかということ。


立ち上がると服に水分が含んで重く、袖で拭うと顔についていた泥を引き伸ばしただけのような感覚が頬から伝わってくる。


まぁいいか、と思いながら街の中を歩いていると雨水で半分の紙面をふやかしている新聞紙を見つけた。


センセーショナルな記事を売り物にするタブロイド紙で、視線を落として日付を見ると二〇六九年の九月二日。


記事には『吸血鬼は政府が創った人間型兵器?!』という見出しからはじまり、ひたすら人を殺し、血液を飲んで飢えを凌いでいた連続殺人犯の二十代男性の遺伝子を基にクローン人間を創り、猟奇的な凶暴性を生かして戦場で白兵戦用兵器として使う計画が進行中。

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