蝉時雨



「‥‥‥言い忘れてただけだもん」



私はそんなこと聞きたくもなかったのに、
自分から口にするなんてもっと嫌。


だいたい涼ちゃんが結婚するなんて
なにが嬉しいの?
菜々子にとってはそんなの
ちっともめでたい話じゃないのに。





すねたような私の返事に
ママが意地悪そうに笑う。



「まったく‥‥この子ったら。
大好きな涼ちゃんが取られちゃうからって
寂しがってるのよ」


「ちょっと!!!ママっ!!!」



慌てて会話に割って入る。

そんなこと言ったら
また子供扱いされちゃうじゃない。


そう思ってるそばから、
涼ちゃんは嬉しそうににかっと笑って
また私の頭をくしゃくしゃと撫でる。






「菜々子は俺のこと大好きだもんな」

「‥‥‥‥‥‥‥」










大好きだよ。


大好きだけど





菜々子の大好きは
そういう意味じゃないんだよ。

涼ちゃん











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