Reminiscence
「シエンか……最後くらい、ランジェと呼ばせてくれ」
「……」
ランジェは黙ったままだった。
旅人はそれを肯定と受け取り、話し始めた。
「ランジェ、力を貸してくれ。俺のマナが離れていってる。それを引き留めてほしい」
「いいだろう」
ランジェが腕を振るうと旅人の周りに青いマナが現れた。
集められて濃度が増し、目に見えるようになったのだろう。
「フェンの様子がおかしいと思って来てみれば、死ぬのか、人間」
「ああ……悪いな。こんなところでお前の大事な娘を一人にさせちまって」
「その罪滅ぼしのつもりか、これは」
ランジェは旅人の次第に濃くなっていくマナを示した。
「ランジェ、最後に頼みがある。俺のかわりに、二つの記憶を」
「ミラーか?」
「できれば」
旅人が瞳を閉じると、ランジェが旅人の額に触れた。
フェンは少なからず驚いた。
ランジェは人に敵意を持たず触れられたり触れたりしようとしなかったから。
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