担任は優しい旦那様
苗字は"佐川"で
通うことにした。

まぁ、そもそも、
受験の時も佐川で
受けたんだけどね

今日から新しい
出会いと生活が始まる。

期待と不安を胸に
新しい一歩を
踏み出そうとしている。

だけど、一ヶ月後に
出会う教師がマー君の
元カノだということ、
そして、半年後には、
私を好きだと言う
男の子が現れること
まだ知らない……

その後、
あの時の様にクラスメイトに
バレるということも。

専門にも
慣れ始めた五月半ば。

マー君が学校の
近くまで迎えに来た時、
一人の女の先生に
呼び止められた。

「佐川さん」

そこでマー君を見て
驚いた顔をした。

『先生?』

返事をしない。

じっとマー君を見ている。

『どうしたんですか?』

もう一度、先生に
話しかけてみた。

「彼は
佐川さんの知り合い?」

今度は反応した。

『あぁ、夫です』

この歳で結婚なんて
引かれるだろうか?

引かれようが
気にしないのだが。

「夫?」

明らかに
動揺した様子だ。

『はい、高二の時に
結婚したので、
今年で二年目なんです』

先生は多分
マー君を知っている。

「彼の名前を
訊いてもいいかしら?」

成る程、
確認したいらしい。

『佐川匡輝です』

私が答えると
更に動揺したってことは
やっぱり、知り合いなのだろう。

『マー君』

車のマドを叩き、
下りる様に促した。

『華蓮、どうした?』

私は少し離れた
場所に居る
先生を指して言った。

『マー君、
あの人知ってる?』

疑問というより確認に近い。

『何であいつが……』

どうやら、マー君も
知ってるみたいだ。

『誰?』

何となく検討はついてる。

『……元カノだ』

やっぱりそうだと思った。

「先生」

手招きして呼んだ。

戸惑いながらも
こっちに歩いて来た。

『久しぶりだな』

車によっ掛かりなから
話し出した。

『本当に匡なの?』

ふ〜ん、"匡"って
呼んでたわけね。

『そうだよ、
お前と同じ高校で
同じクラスで元カレの佐川匡輝だ』

高校時代の同級生……

納得した。

『彼女と結婚
してるって本当なの?』

話している内に
少し落ち着いたみたいだ。

『本当だ
華蓮が高校在学中に
結婚したんだ』

私を引き寄せながら
質問に答えるマー君。

沈黙が続く……
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