担任は優しい旦那様
春とはいえまだ冷える。

『くしゅん』

私がくしゃみをしたから
心配してくれたみたい。

『華蓮、車の中に居ろ』

運転席のドアを開けて
私を車の中に入れた。

何を話してるんだろう?

二人の会話は聞こえない。

私は左手に嵌めてる
指輪をそっと撫でた。

十五分くらいして
マー君が車の中に
戻って来た。

『話しは終わったの?』

運転席から助手席に
移動しなから訊く。

『まぁな』

窓の外をちらっと
見ると先生は
学校の中に
戻って行く途中だった。

家に帰り、マー君に
話しを聞いた。

先生とは高校一年の時に
半年だけ
付き合ってたとのこと。

マー君に好きな人が
出来たことで
別れたらしい。

『そうだったんだ』

過去のことを
ウジウジと考えてても
仕方ないから
この話は終わらせた。

あの一件から五ヶ月。

またもや、
問題が起きた。

今度は、私を
好きだという
男の子が現れたのだ!!

「あの、佐川さん」

その日の
二時間目の休み時間
私は同じクラスの
名前も覚えてない男の子に
廊下で呼び止められた。

『私に何か用?』

そう言うと
階段まで行き、
人目がないことを
確認して口を開いた。

「僕、
佐川さんのことが
好きなんです」

告白されてしまった……

でも私は人妻だ。

『ありがとう』

とりあえず、
お礼は言わなきゃね。

『だけど、
ごめんなさい
私、結婚してるの……』

謝った後で、
左手を彼に向けた。

薬指に光る
マー君から貰った指輪。

「そうなんだ……」

彼には悪いけど、
私はマー君以外
愛する気はない。

でも、友達になら
なっても
いいかもしれない。

『お付き合いは
出来ないけど、
友達になら
なってもいいよ』

笑顔で答えた。

「本当に!?」

彼は驚いて
聞き返して来た。

『うん、
それでもいいなら……』

あくまでも、
彼がいいならって
話しだけどね。

「ありがとう、
これからヨロシクね」

交渉成立だ。

『こっちこそヨロシクね』

友達が一人出来た。

『私が
結婚してることは
皆には秘密だからね?』

彼に言い終えた
ところでチャイムが
鳴ったから
二人で教室に戻った。

マー君に後で
話してあげよう。

きっと、
嫉妬して怒るだろうなぁ。

容易に想像出来て
一人で小さく笑った。
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