担任は優しい旦那様
私は
一瞬躊躇ったけど、
勇気を出して言った。

『高二の時……』

あぁ、語尾が
小さくなっちゃった。

「旦那さん、何してる人?」

あれ?

皆、あんまり
気にしてない?

『高校の先生で
結婚した時は
担任だった……』

今度こそ、皆
引くだろうか?

ちょっとした
沈黙が怖い。

「私は気にしないよ」

そう言ったのは
隣の席のちょっと
おっとりした女の子。

名前は確か
鈴見さんだったと思う。

これがきっかけで
一生の付き合いに
なることを
この時は私も
彼女もまだ知らない。

『鈴見さん……』

「私、
佐川さんの馴れ初め
聴きたい!!」

見た目は
おっとりなのに
意外と好奇心が強いのね。

『分かった……
他の皆は……?』

二回目の沈黙を
破ったのは、
黛君だった。

「僕も聴きたいな」

彼のお陰でなんとか
場の空気が少し和らいだ。

周りを見渡すと
私を冷たい目で
見る人は居なかった。

『何処で話そうか?』

場所提供をしたのは、
鈴見さんだった。

「私の家にしませんか?」

何故か敬語に
なっている鈴見さん。

というわけで
場所は
鈴見さん家に決定した。

放課後、マー君に
友達の家に行くことと
悠緋さんのお見舞いに
行けなくなったことを
メールして携帯を閉じた。

「旦那さんにメール?」

鈴見さん家に
行く途中で黛君が
訊いて来た。

『うん』

鈴見さん家は
所謂お金持ちで
家というより
お屋敷だった。

中も玄関だけでも
かなり広く、
案内された鈴見されの
部屋も広かった。

「皆座ったところで
佐川さん、早速
馴れ初めを聴かせて」

急かされてしまった。

私は、絢菜が
来た時と同じで
手紙の話しから始まり、
悠緋さんが結婚を薦め
高二の時に婚姻届を
出して今に至る
ということを全て説明した。

「今度、皆に紹介してよ」

黛君は
ニヤリといった表情をした。

「私も会ってみたい」

今日は二人に
押されてるような
気がする……

『旦那さんに
訊いてみてからね』

帰ったらマー君に
話してみよう。

二時間後、時間も
遅いってことで
解散となった。
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