担任は優しい旦那様
結果から言えば、
左京先生が
その日の内に帰って来る
ことはなかった。

恋は明日仕事のため
十一時には寝た。

その三時間後、
つまり午前二時に
左京先生は帰って来た。

『靖紀、お帰り』

眉間に青筋立てた
マー君が玄関で
仁王立ちして居る。

「何で居るんですか?」

戸惑った
顔をした左京先生。

『泊まったんだよ』

マー君の後に続き
左京家の
リビングに向かった。

『前橋さんは
寝てるから
静かにしろよ』

マー君は
かなり不機嫌だ。

『先ずは座れ』

自分ん家のはずなのに
言われるまで
座れなかった左京先生。

恋が寝てるのもあって
あくまでも静かに
怒ってるマー君は
何時も以上に怖い。

普段、あんまり
怒らないから
余計に怖く
感じるのかもしれない。

『何でこんなに遅い?』

左京先生は何も答えない。

恋が疑ってる様に
本当に浮気なんだろうか?

だとしたら、かなり最悪だ。

長い沈黙が続く。

『はぁ〜』

静かな部屋に
マー君のため息が響いた。

そんな中、
恋が起きて来た。

「靖紀、
帰って来てたんだ……」

時計は
午前二時二十分と
表示されている。

左京先生が
帰って来て、
既に二十分は
経っているということだ。

『恋、どうしたの?』

パジャマ姿のまま
部屋から出てて来た恋。

「喉渇いちゃって
靖紀、今日は早いんだね」

えっ?"今日は"?

『ちょっと待って恋
"今日は"って
どういうこと?』

マー君が左京先生を睨んだ。

午前二時で早いって
遅い時は何時なんだ?

「この時間に
居るなんて
珍しいことで一番遅い時は
朝六時とかだよ」

朝帰り……

こう言っちゃ何だけど
呆れてものも言えない。

水を飲んで恋は
部屋に戻って行った。

『おい靖紀、
朝帰りとは
どういうことだ?』

立ち上がったマー君は
左京先生の胸倉を掴み
何時もより
低い声で言った。

私も無言で睨みつける。
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