担任は優しい旦那様
こんな男と三人に
なんてさせられない。

『勿論、
那々弥さんと
栞菜ちゃんが
心配ですから』

那々弥さんの旦那を
睨みつけて居た目を
一瞬だけ綻ばせた。

そして、場所は
那々弥さんたちの家に。

これが一時間前の
出来事である。

私たちが
居た場所から
那々弥さんたちの
家まではそんなに
距離はない。

こうして、
那々弥さん家に
お邪魔することに
なったんだけど
帰ってくる時も
今も空気は重たい。

誰ひとり
話そうとせず
険悪ムードのまま
時間だけが過ぎて行く……

そんな中、大人の
嫌な空気を感じたのか
栞菜ちゃんが
大泣きした。

母親である
那々弥さんも
いきなり泣き出した
我が子に少し
驚いていた。

『那々弥さん
栞菜ちゃん
抱っこさせて下さい』

子供は大人の
感情の起伏に敏感だ。

「お願い」

那々弥さんが
栞菜ちゃんを
私に渡した。

「それで、
今更何の用?」

那々弥さんの旦那が
戻って来た理由に
私たちは呆れてしまった。

なんと、この男
那々弥さんに
お金を
貸してくれと言って来た。

何ヶ月も行方を
くらましてた癖に
奥さんにお金を
貸してくれとは
図々しいにも程がある。

呆れて
しまったのもあるが
先程より空気が
重くなくなったお陰で
栞菜ちゃんも
大分落ち着いて来た。

話し合いの結果、
那々弥さんは
お金を貸したけど
此処には
もう来ないでと言って
追い出した。

そして、
那々弥さんの
腕の中に居る
栞菜ちゃんのことを
何も聞かない所か
気にも止めてなかった。

父親としても
旦那としても失格な男だ。
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