担任は優しい旦那様
理香だって、
このままじゃ
お父さんと
気まずいまま
あの家で
暮らすことに
なりかねない。

『ね、そうしよう?』

言い出したのは
マー君だけど
私だって、
そうしたいと思ってた。

『駄目だったら
最初から言わないよ』

私はマー君は
理香の頭を撫で
二人で抱きしめた。

『そうだぞ』

荷物を
取りに行くため
三人で一度、
理香の家に
行くことになった。

『理香ん家
来るの久しぶりだね』

お泊りをした
あの頃には
理香だって、
両親が別居するなんて
思いもしなかっただろう。

「理香お嬢様!!」

廊下の向こうから
走って来たのは
あの時のメイドさんだ。

「お久しぶりでございます」

庶民の私にも
相変わらず敬語だ。

『お久しぶりです』

私も挨拶を返した。

「そちらの方は?」

メイドさんは
マー君を見て言った。

『私の夫です』

「パパに会った?」

私の隣に立ち
少し俯いたまま訊いた。

「旦那様には
私もお会いしていません」

申し訳なさそうに
彼女は言った。

「そっか……
もしパパに会ったら
私は当分華蓮ん家に
居るって言っといて」

「お伝えしておきます」

一礼して彼女は
行ってしまった。

三人で
理香の部屋に向かい
服や必要な物を
二つの大きめな
キャリーケースに詰め込んだ。

『じゃぁ、帰るか』

長居する必要はないから
用が済めば帰るだけだ。

荷物をトランクに積んで
家に向かった。
今日から三人での
暮らしが始まる。

「今日から
宜しくお願いします」

理香に
畏まられると
なんだか、変な感じだ。
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