『仰せのままに、お嬢様』《完》
「もしかして、
昨日のことがあるから?」


尋ねると、楓さんは即座に
頷いて、


「さようでございます。

用心にこしたことは
ございません。

キャンパスに入ればある
程度安全でございましょうが、
校門までの道中、お一人に
なられるのは少々危険で
ございます」


「……………」


あたしは俯いて少し考える。

やっぱり、そこまでしなくても
いいんじゃないの、って
いう思いはある。


でもそう言われると怖い
気もするし、見ると楓さんは
腕に黒いコートをかけていた。

きっと防寒じゃなく、燕尾服を
隠すために羽織るつもり
なんだろう。


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