狼様の愛のカタチ理論





「はい、もしもし?」


「………あ」


聞きたくて、聞きたくて、聞きたくて仕方がなかった声を聞いた瞬間


それだけなのに、溜めに溜め込んだ涙が一気に溢れた


「………っ」

「もしもし?え?」


黙りこんでしまう私の耳には院長様の声しか聞こえない

泣いてちゃ、だめ… 何か言わないと…

言わないといけないのに最後に何を言ったらいいのか分からない


「…うっ」

「もしかして…沙優?」
「…っ!」

「どうしたの?何かあった?」


だれ?じゃない、沙優?そんな風に電話の主が私だって分かるのはきっと院長様しかいないだろう


「ごめ…ん、なさい…こんな、時間に」


「いいのよ?…それより、泣いてるの?」


「あ……い…いえ」


そう言われ、電話越しに私は涙を拭きながら、首を横に振った


「嘘ね」

「っ」

「沙優は分かりやすいんだから」

「…あ」


"私には分かるのよ"そう言いクスリと笑う院長様に拭いたはずの涙がまた出てしまう



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