放課後は、秘密の時間…
「いたっ……」


無意識に出た言葉に、市川君が指先で確かめるようにあたしの頭に触れた。


「コブできてる。これじゃ痛むよな。先生、大丈夫?」

「平気。でも、どうして……」


コブなんかできるようなことした?


そこまで考えて――

色んな光景が、頭の中をものすごいスピードで駆け巡っていった。


そうだ。

あたし、堤君に呼び出されて、押し倒されて……


肩を強く掴まれたときに、頭を思い切りぶつけたのは覚えてる。

でも、そのあとのことが、どうしても思い出せない。


「……あ、たし……」

「先生?」


意識を失う瞬間に、確かに聞いたベルトをはずす音。


まさか……?


「あたし、堤君に……?」

「先生、違うっ!」

「市川君……?」


肩を揺すられて、のろのろと顔を上げると、市川君が首を横に振った。


「大丈夫、何もなかったから」

「え……?」

「あいつと先生は、何もなかった」

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