放課後は、秘密の時間…
「……そう、だったんだ」

「うん、ごめん。それで……俺はそんなの全然興味なかったけど、全校朝会で挨拶してる先生見て――」


豪快にガシガシと頭を掻いて、


「気が変わったんだ」

「どんな風に?」

「だから……他の男が近寄んの、許せなかったんだよ。たとえ、ゲームでも」

「?」

「気が付いたら、俺が落とすからって口走ってて。賭けなんて、俺はどうでも良かったんだ。とにかく先生に近寄りたくて」

「……え……」

「だから、つまり……先生に一目惚れしたんだよ」


大きな溜息をついて、市川君はあたしの肩に頭をのせた。


「ちくしょ、俺すっげーカッコ悪い」

「じゃあ……あたしのこと、好きっていうのは……」

「本気だよ。必死だったんだ。先生は彼氏いるって言うし、実習の期間は短けーしさ。好きって何度言っても足りねぇ気がして」

「……ホント、に?」

「先生が信じてくれるまで、俺、何度でも言うよ」

「聞きたい……今、聞かせて?」


ぎゅっと抱きつくと、市川君もあたしの背中に手を回した。


「先生が、好きだ」


この一言を、聞きたかった。


ずっと、ずっと――……

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