放課後は、秘密の時間…
ほんの少しのすれ違いで……

あたしは、この腕を失ってしまうところだったんだ。


「先生があいつと電車乗ってくトコ見た時、俺、もうダメだって思ってさ……」


そうだ、あたしも誤解とかなきゃ。

市川君、さっきも大也のこと言ってたし……


「あたしね、彼とは別れたよ……」


ううん。

むしろ、大也が背中を押してくれたんだ。


――『頑張ってこい』って。


あの手がなかったら、あたしは今ここにきっといない。


「じゃあ、先生……」

「うん、市川君だけが……好きだよ」


言葉にした瞬間、甘いキスが降りてきた。

あたしは、静かに目を閉じる。


好き。

大好き。


そんな気持ちが、触れたところから、伝わっていけばいいのに。

そしたら、あたしがどれだけ市川君を好きか、市川君もわかるから――……


「先生、好きだ」

「あたしも市川君が好き……」


キスの合間に何度も繰り返して、あたし達はいつまでも幸せな気持ちに浸っていた。

< 231 / 344 >

この作品をシェア

pagetop