放課後は、秘密の時間…
「せんせーおはよー!」

「おはようございまーす、二宮センセ」

「おはよう」


正門に入ると、あたしに気づいた生徒が元気に挨拶してくれる。

あたしも笑顔でそれに応えながら、玄関へと向かった。


「あかりちゃんっ、おっはよー!」


靴箱に手を伸ばした瞬間に、呼びかけてきた大きな声。

朝からこんなハイテンションで、しかも、あたしのことを「あかりちゃん」なんて呼ぶ生徒は、たった一人しかいない。


「だから、武藤君……二宮先生と呼びなさいって何度言えば、」


振り返りながらいつものフレーズを言いかけて、あたしは言葉を失った。


目が、彼の姿に釘付けになる。

ダークブラウンの髪に、長身のシルエット。


「おはようございます、先生」


なんで朝イチで会っちゃうの?

一番会いたくないって思ってたのに……


「……おはよう、市川君」


まるで昨日のことなんかなかったかのように、市川君はいつもと同じように微笑んでる。

だけど、あたしの方はそうもいかない。


昨日あんなことがあって――

どんな顔したらいいのかわからないよ……


思わず俯いたあたしの耳に、武藤君に話しかける彼の声が聞こえてきた。

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