放課後は、秘密の時間…
何度も頷きながら、やっとのことでそう言うと、


「な、言った通りだろ?」


市川君は満足そうに微笑みながら、武藤君に話しかけた。

だけど、ポケットの中に入れた手は、相変わらずゴソゴソさせてる。


なんで……?

あたし、ちゃんと頷いたじゃん!


まさか……携帯電話、出したりしないよね?


「へぇ~そっか!オレさぁ、一度あかりちゃんと一緒にメシ食ってみたかったんだよねーすげー楽しみー」

「うん、あ、あたしもみんなと学食、お昼休み、楽しみ……」

「アハハハ、何でカタコトなの!?あかりちゃんウケる~!」

「うん……」


楽しそうな武藤君の言葉は、あたしの耳をさぁーっと通り過ぎていく。

「あかりちゃん」って呼ばれてるのに注意できないほど、今のあたしには余裕がない。


市川君がポケットから携帯電話を出すんじゃないかと思うと……

もう、気が気じゃないんだ。


「ねぇ先生、これ」


ついに市川君が、手に握ったものをポケットから出そうとした。


こんなとこで、武藤君もいるのに。

二人きりの秘密とか言ったのは、市川君なのに。


一体どういうつもりでっ……


い、市川君っ――……!!

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