last.virgin
ピアスを無くしてしまったかも知れないショックを引きづりつつ、給湯室からコーヒーを二杯紙コップに注いでデスクに戻ると、私の椅子に坂口さんが座っていた。
えぇ〜っ?!
何で坂口さんが私のデスクに?
もしかして昨夜の事…気付いてたの?
坂口さんと里奈さんは何やら楽しげに話していて、そんな二人はとてもお似合いに見えてしまって、私はチクリと胸の奥に訳のわからない痛みが走った。
いつまでもこうしている訳にもいかず、ドキドキチクチクとする心臓を、知らないふりして坂口さんの背中に声をかけた。
「…あの…すみません…そこ…」
坂口さんは振り返ると。
「あっ、ごめん、君のデスク?」
「……はい」
「あっ、遙ちゃん、コーヒーありがと…あ、遙ちゃんも昨日の飲み会に参加したよね?」
コーヒーをひとつ渡しながら里奈さんはそう言って。
「……はい」
「坂口さん、この娘、今年の新入社員の村山遙ちゃん」
「どうも、坂口修二です、新入社員かぁ、て事はまだ一ヶ月足らずって訳ね?だから知らなくて当たり前かぁ…」
………坂口さん、やっぱり昨夜の事、覚えてない…
よかった……。
「……あ、ごめん、邪魔だね?」
そう言って立ち上がろうとした坂口さんのジャケットの袖に、持っていた紙コップのコーヒーが支えてしまい。
「熱っ!…」
「わっ!すみませんっ!」
「……いや、俺が支えたから…」
大変っ!坂口さんの高級なジャケットにシミが付いてしまうっ。
「来て下さいっ!」
私は慌てて坂口さんのを腕を掴み、給湯室へと引っ張って行った。