last.virgin



「遙ちゃん?坂口さん大丈夫だった?…て、あれ?眼鏡は?」


「あっ、眼鏡は…フレームが曲がってて、かけても歪むから、外しちゃいました、ははは…坂口さんのジャケットはシミにならず、火傷もなくて無事でした…」


デスクに戻ると里奈さんが聞いていたので、私はそう答えて椅子に腰をおろした。



「やっぱり遙ちゃん、眼鏡しない方が凄く可愛い」


「ほえ?…あはは、あの眼鏡も寿命だし、社会人になったんだから、私もコンタクトにしようかなって思ってました」


「うん。そうしなよ、私がメイク教えてあげる、きっと遙ちゃんモテモテになるよ?」


「え?ホントですか?」


「うん。わたしが保証する」



里奈さんにそう言ってもらえると、何だか嬉しくなってしまう。



仕事を再開しようとバソコンのキーボードに手を伸ばしかけて、さっきの坂口さんの事を思い出してしまい、チラリと坂口さんのデスクに視線を移した。



眼鏡がなくてボンヤリとしか見えなくて、顔をしかめ目を細めて見てみると、田村さんと坂口さんもデスクに戻っていて、坂口さんはコーヒーを啜りながら、明らかに私の方をじっと見ていて。



うわっ!めっちゃガン見されとる!



私はぐるんと坂口さんに背中を向けて、正面のパソコン画面に視線を移した。



これは間違いなく……



昨夜の事に違いない…



坂口さん、お前だったのかって言ってた。



何でばれちゃったんだろうか?
挨拶した時もまるで初対面みたいだったし…全然そんな感じしなかった…



もしかして…シーツを汚してしまった事に、物凄く腹をたててるんじゃないだろうか?



少しだけ顔を横に向けて、再びチラリと坂口さんを見ると、まだ私の事をガン見していて。



どうしよう…あのシーツもしかして物凄く高いんじゃ…
1万円じゃ足りないから、きっと怒っとるんや…






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