last.virgin
「和久井君、ラーメンはまた今度ね」
アクセルを少し踏み込み、ゆっくりと走り出しながら和久井君に手を振る遙。
「待て、遙」
和久井の手が窓から延びてハンドルを掴んできて。
「何?…、早く行きたいんやけど?」
「……何か…困った事あったら、夜中でも、いつでもいいけん、電話せろよ?」
「ほえ?…、うん…。わかった」
「必ずやぞ?…」
そう言ってハンドルを掴んでいた手を離すと、遙の頭をクシャッと撫でて、最後に俺をひと睨みして腕を引っ込めた。
和久井の眼力に若干怯みそうになり、ふいと視線を反らす。
我ながら情けない……。
遙は和久井に、もう行くね。と一言告げてアパートの駐車場を後にする。
車のデジタル時計に目をやると22時を回っていた。
随分遅くなったな。
助手席に沈みズキズキと痛む肩に手を当て深く息を吐く。
やっぱり痛い……。
「坂口さん、ちょっと、すみません」
「え?…」
遙の小さな掌が延びてきて俺の額に触れた。
「……やっぱり、熱がありますね…」
額に触れた掌が冷たく感じると言う事は、遙の言う通りなのだろう、医者からも今夜は熱が出るかも知れないと告げられたし。
「そうか?、俺、平熱高いんだよ、ははは」
平熱なんて36度も無いんだけど、只でさえ頼りなくて情けないイメージを遙に持たれてしまっていのるににさらに発熱なんて…。
強がりを言ってその場をやり過ごすし事しか出来なかった。