たった一人の親友へ〜another story〜
一人で住み始めてから


家にはよくさなが泊まりに来た


「どうせ寂しいでしょ?」なんて言って


本当は彼女も家に帰りたくなかったのかもしれない


そんな心の隙間が垣間見えたから


俺は何も言わなかった








そんな平凡な毎日が続く中


運命の一本の電話が鳴った


「もしもし」


応答はない


「もしもし?」


間違い電話かな、なんて電話を切ろうとしたその瞬間だった


「翔か?」


耳に


懐かしい低音が響いた


言葉が出なかった


記憶が身体中をめぐった


あんなにも小さかったのに


記憶はしっかりと心に刻み込まれていた




「父さん?」
< 64 / 220 >

この作品をシェア

pagetop