たった一人の親友へ〜another story〜
はじめの一歩
春休みが始まった


卒業式当日


母親は俺に向かって泣きながら


“おめでとう”と


“ごめんね”という言葉を


発し続けた


きっと今の家族に俺の居場所はない


母親も同じことを思ったのだろうか


いつの間にか義父の事務所は他の場所へ移転し


この事務所は俺専用のものになった


それは


義父が俺に出した最後のサインだったのかもしれない


“もうお前はいらない子供なんだよ”という


事務所という関わりすらなくした俺達は


戸籍上以外何の繋がりもない


ただの他人になった
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