たった一人の親友へ〜another story〜
本当の距離
五日ぶりだった


久しぶりにさなに会えた喜びを俺はいっぱい伝えたかったのに


さなの方は何だかそわそわして様子が変だった


さなの家に上がろうとする俺を必死にとめて


「今友達来てるの」


そう気まずそうに言うさな


一瞬で理解した


今までこんなこと一度もなかったから


玄関にある男物の靴と


首筋にうっすら残るキスマークが


俺の推測を確信に変えた




「友達って誰?」


「別に。普通の友達だよ。」


「だから誰?」


「うるさいなぁ。
隆也だよ!」


売り言葉に買い言葉


俺の心の中にどす黒い何かが見え隠れした


「隆也ってあの隆也先輩?」


「うん」


「はっ?お前ら別れたんじゃないの?
聞いてないんだけど。」


「言ってないもん。
やり直したの、隆也と。」




世界が止まった


心臓が暴れ狂ってる


タカヤトヤリナオシタ?


言葉の意味を理解するのにも時間がかかった
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