ガラスのタンポポ#虹
“翔ちゃん…”


奏来がオレを抱き締める。


小さな体温がオレの気持ちを解放させる。


「奏来。今でもオレは…。奏来が好きだよ」


胸の中の奏来が首を振る。


気持ちは届かない。


わかりきった事なのに、泣きながらオレの気持ちを受け取ってはくれない奏来をオレは強く抱いた。


「ゴメンな、奏来。ゴメン…」


この切なさはオレを裏切らない。


この時はオレと奏来だけのもの。


それだけくれればいい。


奏来の涙を見届けてオレは家を出た。


夏の日差しは肌を焦がす。


奏来の涙は。


オレの胸を焦がす。
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