ガラスのタンポポ#虹
“ねぇ、翔ちゃん?”


「何だ?奏来」


“後で一緒に公園行ってくれる?”


「兄貴じゃなくて、オレと?」


“うん”


「OK。飯食ったら行こう」


いつもより豪華な食事を静かな家で食べ終えると、オレは奏来と、オトばあとよく3人で過ごしたタンポポの公園へ向かった。


奏来はワンピースが汚れるのも気にせず芝生を這い、何かを一生懸命探し出す。


「奏来、探しモン?」


“うん。タンポポ見つけたいの”


「…タンポポ?」


“おばあちゃんにお供えしたいの”


探そうにも秋風が肌を冷ますこの時期、綿毛のタンポポすら、もうない。


奏来だってわかってるはずだ。


オトばあもタンポポも、もうないって事。
< 90 / 225 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop