ガラスのタンポポ#虹
「奏来、どうして…?」


聞いても奏来は見つからないはずの黄色い花を探し続ける。


オレも公園内を這い、奏来と同じようにどこにも咲いていないタンポポを探した。


ありもしないタンポポ。


オレは諦めて奏来の横にしゃがんだ。


「奏来」


声をかけても小さく震える手は、芝生を懸命にかき分ける。


「奏来、もうやめよう」


奏来は探す手を止め、オレを見上げて口を動かす。


「?」


首からぶら下げたメモ帳に奏来は字を綴る。


“終われないの”


「何が…?」


“タンポポ見つけなきゃ、翔ちゃんとの日々を終わりにできないの”


奏来…。
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