悲しき 極道

月日がすぎて、
もぉ冬や。

この頃になると、
パン屋の前には
パン入りの
箱がなくなってた…

そらぁ、そぉやな。
オバチャンも、
アホやないから気付くわ。


仕方なく食料は、
奥田の家から貰う事にした。

間違っても、
この前みたいに
日本酒だけはサケたわ…



この頃、
近くの川によく行った。

川の堤防に、土佐犬を
何匹も飼ってるオッチャンがおって、
可愛がってくれてた。

なんせ、
毎日の様に行くさかいな。

憧れたなぁ。


ワシも大人になったら、
大きい犬こぅたる!

一つ夢が増えたな。


まぁ、
憧れたオッチャンやけど、
いちをウチの犬らのため、
ドックフードだけは
頂いて帰ってたけどな。



この快適な生活を、
また邪魔された…


オヤジに見つかってもた。


二回目やから、
オヤジは何んも言わず
ワシを家まで
引きずって帰りよった。


玄関入るなり、
ボコボコにいわされた…

目が見えん位にな。


気ぃついたら、
ベットの上に
横たわってたわ。

オマケに
手と足にロープまいとる…


なんちゅう親や!

子供を縛りつけるとは!



ワシは
必死でロープほどいて……

あれ?


簡単に取れた…


微かな記憶に、
ママハハが緩めてくれてた。

可哀想やからやないで。
また家出してほしいからや。


今度は玄関から、
胸張って出たった。


しかし、
体中が痛い。
冬の冷たい風が、
余計に痛く
感じさせてくれよった〜…
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