恋歌 〜secret love〜
「次が、最後の歌です」



静かになった音楽室に、奏の、少し高めの声が響いた。



「あ……最後だから、ちょっとだけ、MCやっちゃうね?」



ちらっと勇人を振り向いた奏。


それを見て、勇人がゆっくりと頷いた。



「うーん……と。PIECEの歌はほとんどが勇人の作詞作曲なんですけど、次の歌は私が作ったものです。

曲を作ることが初めてだったわけじゃないけど、みんなに認めてもらえるものが作れるか不安で……。

それに、個人的な事情で『もう歌は作らない』って自分に言い聞かせたかった部分もあって……。

正直、怖かったんです」



奏は、視線をまっすぐ前に向けた。



「でも、あたしの周りには、そんな弱虫で、諦めることだけ上手なあたしを……笑いながら支えてくれる人が、たくさんいました。

大切な人が……いました。

だから、次に歌うのは、そんな大切な人達に送る、あたしなりの応援歌で……ラブレターみたいなものなんです」



はぁ、っと小さな息がマイクから伝わる。



俺はいつの間にか、そんな彼女から目が離せなくなっていた。



「だから……、聴いて下さい。……恋歌」
< 286 / 339 >

この作品をシェア

pagetop