恋歌 〜secret love〜
「まずは春休み明けの課題テストを返します。
順番に前へ取りに来て下さい」



頼城先生の、妙に丁寧な言葉が教室に響いた。





一人一人が結果を噛み締める中で、あたしの名前も呼ばれる。




「押端奏[おしばたかな]」



聞き慣れた、聞き飽きたこの響き。



でも、今この瞬間のそれはとてつもなく愛しくて……

新鮮に聞こえた。




席を立って、頼城先生の元へ行く。


無言でテストを受け取る。


一瞬だけ視線が重なる。


次の人の名前が呼ばれて、あたしは席へ戻る。




たった10秒程度。



でも、そのわずかな時間に、あたしは知っちゃったんだ。




あたしは、頼城隆夢が




好き、なのかもしれない。




たぶんきっと、これは一目惚れ。



信じたくない。

否定もできない。



だって、先生にだよ?

全然知らない人に、だよ?



やっぱり信じたくない。


認めても、叶う想いなんかじゃない。


その先に幸せが広がる可能性なんて、あるはずもない。




『諦めろ』




あたしの頭の中は、この言葉でいっぱいになった。
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