恋歌 〜secret love〜
助手席では、奏が熟睡している。
寝ている彼女を起こすまいとステレオのボリュームも下げたし
できるだけ静かな道を、できるだけ静かに走るようにした。
無防備に眠るその顔には、いつもみたいな曇りもなくて、幸せそうに見える。
今日の様子も、何か、どこかすっきりした印象を受けた。
きっと、今まで溜め込んできたものを吐き出せたんだな……
そして、それを促したのはぉそらく桐渓さんと、勇人なんだと思う。
『高校でできた友達とは一生付き合うことができる』
なんて聞いたことがあるが、この3人はまさにそんな友達なのかもしれない。
教えてもらった奏の家には、この調子でいけばあと2〜3分で着くはずだ。
でも、眠ったままの彼女を俺が抱き上げて自宅へ連れていくわけには……いかない。
絶対に。
もうすぐ午後7時。
最近の女子高生って、どのくらいの時間まで外出してても許されるんだ?
あまりにも遅いと保護者は心配するはずだし……
俺は近くの公園の駐車場に車を停めて、携帯を取り出した。
電話帳からメモリーを呼び出して、発信ボタンを押す。
数回のコール音の後に声が聞こえた。